ウイングロックデンチャー

動画でお分かりのように、通常の保険の義歯では着脱時に鈎歯に負担を掛けますが、ウイングロックデンチャーは義歯本体の着脱で鈎歯に負担を掛けることはありません。セットに立ち会うことも多いのですが、マグネットの特性で患者さんは簡単に着脱できます。

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まず最初にウイングロックデンチャーの禁忌症についてご理解いただきたいと思います。ウイングロックデンチャーは固定源にマグネットを使います。一番気を遣うのは誤飲です、特に義歯本体とウイングを同時に誤飲されることは避けなければなりません。同時誤飲の場合は消化器官内でウイングと義歯本体がくっつくことが考えられます。その際に消化器官の襞を挟む危険性があります。

禁忌症として、同時誤飲の危険性のある小さいサイズの義歯。一本義歯や片側遊離端欠損としています。片側遊離端欠損についてはリムーバブルウイングデンチャーでの対応をお願いいたします。

ウイングロックデンチャーは「ご挨拶」でも書きましたように義歯を分割して口腔内で組み立てて機能させる。外す時は口腔内で分割して取り出すシステムです。特徴などはリムーバブルウイングデンチャーと同じです。適応症例ではリムーバブルウイングデンチャーが遊離端欠損であったり、中間残存になるのに対して、ウイングロックデンチャーは中間欠損に対応できます。それぞれの症例に合わせて対応できるよう症例によって取り組みたいと考えています。

臨床例 

臨床例

下顎中切歯の先天性欠損症例。患者は当時32歳女性、歯槽骨の骨量も少なく、インプラントは不可。隣在歯にカリエスもなく、ブリッジにするために削りたくないとの要望で、消去法からデンチャーが選択された。審美的な要求からウイングロックデンチャーでの補綴となった症例。このケースは全く前処置を施さずに済んだ、インプラントやブリッジと異なり後戻りができる補綴処置と言える。 セットは2013年8月、2016年8月で3年経過、予後は良好である。

臨床例

下顎前歯部欠損、模型で分かるように左下3番は歯肉の退縮が著しく歯槽骨の退縮も予想できる。歯冠歯根比率も悪く、動揺がある。このような症例ではこの歯牙を鈎歯として使うことは難しいと考えられるがあえてウイングロックデンチャーで対応した。人工歯の下の歯肉部分にマグネットを2個配置してウイングを固定している。セットが2013年10月であるので2017年5月で3年6か月の経過であるが幸いまだ抜歯対象にはなっていない。おそらく舌側と唇側で二次固定の効果もあるのではないかと考えられる。いずれにせよ鈎歯の負担軽減とゆう効果は得られている症例である。 当初は左右第一大臼歯にエーカースクラスプを予定していたのですが、患者さんの要望で外すことになったケースです。動画はこのケースを後日サンプルにしたものです、保険の義歯との比較になります。保険の義歯が着脱時に引っかかるようになるのに対して、ウイングロックデンチャーはスムーズに着脱できていることが分かります。

臨床例

著しくフレアーアウトしている症例、特に右上2・3番のフレアーアウトがひどくクラスプデンチャーでの対応は不可能と思われる。ノンクラスプデンチャーでもサベイラインを考えれば満足のいくものは製作できないと考えられる。このような症例でもウイングロックデンチャーは製作が可能。患者さんのQOLに貢献できた症例だと思う。

臨床例

一本義歯です、通常なら両臨在歯にクラスプを設定するところですが、できるだけ鼓型空隙内で維持・支持・把持の三要素を発揮できるようにしたケースです(支持はレストになりましので咬合面になります)。レストとウイングによって臨在歯との隙間が塞がれているので食物残渣がなく、クラスプの違和感もないとゆうことで装着感に高い評価をいただいているケースです。

臨床例

前歯と臼歯では萌出方向が異なるために義歯の設計には悩むことが多々あります。このような症例はよく見るケースです。前歯部がフレアーアウトしていてクラスプの設計ができないので、前歯部はウイングで維持を求めて臼歯部にクラスプを設定しました。ウイングのみで維持を求める場合は義歯にかかるローリングに神経を使いますが本症例はクラスプやメタルアップの効果も期待できるので安心して作ることができます。また、前歯部の歯肉が退縮したスペースにウイングを設定することで違和感を与えることが低減されます。

これらの症例で分かるように、従来のクラスプデンチャーでは到底満足のいくデンチャーは作れない症例でもウイングロックデンチャーなら審美的にも鈎歯の保護といった観点からも優位性を感じることができる。